夕暮れ坂道。

2008年3月8日
陽がビルの合間に身を潜め始める。
オレンジは鮮やかに、鮮やか過ぎる程にその強烈な光を焼き付けようとする。

ぎこ。ぎこ。
と軋んだオレのオンボロのチャリンコ。
はぁ。はぁ。
と、弾むオレの息。

老体に鞭を打つとはこのことなのだろう。

オレの身体もチャリンコも、もう限界間近。
「重…っ」
ぐっとペダルを踏み抜けば、答えるようにチャリンコは前進。
多少のふらつきはご愛嬌。

遣る瀬無さを飲み込んだ息は、さらに上がって。
焼き付けようとする太陽は、もうすぐ消えて。
荷台に座る筈の君は、もう居ない。

「重い、ねぇ…っ」

上がる息を抑えて、踏み抜くペダル。
軋むチャリンコ。

軽い筈の荷台が、いつもより重い。

嗚呼。
太陽が。

「なんでかな…、」

君が居ないのに、どうしてか荷台が重いんだ。
頑張れ、と応援する君の声すら聞こえないのに、どうしてオレはこの坂道を登るのだろう。
君の家路までの一本道を、君を乗せないままで、オレは登る。

ぎこ。ぎこ。
はぁ。はぁ。

嗚呼。
なんて重い。

嗚呼。
太陽が。

沈む。

この坂道を越えたら、君は見えますか。

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