ウサギの眼が赤いのは、いつも泣いているからなのです。
悲しい事があって、いつもその事を思い出して、泣いてしまうのです。
毎日毎日、それこそ一年中。いつも涙で濡れる頬は、やがて色が落ちて、それと一緒に、体が真っ白になってしまいました。
それが、悲しくて悲しくて、ウサギはさらに泣きました。
夜も昼も、暖かい、優しい春も、暑く、生命の芽吹く夏も、姿を変え、彩る秋も、寂しく、厳しい冬も。ずっと、ずっと。
それでも悲しみが癒える事なんかなくて、ウサギはずっと泣き続けました。

ずっとずっと、ウサギは一人で泣いていました。





俺は思うんだ。

悲しくて悲しくて…、どんどん悲しみの淵に落ちて行って、泣きウサギには何も残らなかったのだろう。
悲しみだけが積もり積もって、それでも泣く事を止めなかった泣きウサギには、助けてくれる相手はいなかったのだろう。
小さな体を震わせ、何万という寂しい夜を泣き濡らしてきたのだろう。

それは、今の俺に似ている。

想いを消し切れずに、ずっと引きずって、それでも救ってくれる存在なんか無くて。
募るばかりの想いに、吐き場所なんかない。
幾度、その衝動に心をバラバラにされる思いをしただろうか。
幾度、その衝撃に涙を流した夜があっただろうか。

幾度、人を想う事の辛さを刻まれたんだろうか。

きっと、泣きウサギも、叶わない想いを持っていたんだと思う。
そう思いたいだけなのかも知れない。
大事な人が亡くなったとか、大事な人が手の届かないどこか、遠くに行ってしまった、だとか。
人によって解釈は違うのだろう。けれど、俺はその解釈しか出来ない。
想いの辛さを重ねて、楽になったりしたい訳じゃない。

ただ、辛かったんだな。と思いたい。
泣きウサギの傍に居てやりたい。

俺が、その衝動に助けを求め、涙を流し、痛みを刻まれた時。傍に誰か居てくれたら、嬉しいだろう。
一生忘れられないだろう。
だから。
ただ傍に居て、辛かったんだな、って声をかけてやりたい。
そう思っただけ。
俺がそうして欲しかったように、ただ傍に居てやりたい。


そう思うんだ。

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