開けてはいけない。

その蓋を取らないで。

 

流した過去に蓋をして、
開かないように鍵をして、
中が腐って、腐乱して、ドロドロに解けて、砂に還るまで。



誰にも見せてはいけない。



真っ赤なの裡を見せ、本当の姿を隠して。

漆を塗りたくった髑髏の額にキスをして。

鈴の音色に誘われ、狂気の上に腰を下ろす。





カラカラと餓えた喉に流し込む、冷たい水。

火蜥蜴の舞に酔い痴れ、堕ちる。



曖昧な拒絶で痛みを憶え、眼球の裏の神経に針を刺す。



もがくほどに絡まる蔦の滴る血に恍惚。

啜る血の味に極上の蜜の味。

深く眠る夜さえも永遠の夢を見よう。

冷たく暗い明日へ静かに想いを絶ち。







鎮められた彼の魂を呼び起こす、繭の中で。



蓋をして。

目隠しをして、何も見ないで。


時が全てを風化させてくれるから。

開けないで、その蓋を。

永遠に。

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