夕暮れ坂道。

2008年3月8日
陽がビルの合間に身を潜め始める。
オレンジは鮮やかに、鮮やか過ぎる程にその強烈な光を焼き付けようとする。

ぎこ。ぎこ。
と軋んだオレのオンボロのチャリンコ。
はぁ。はぁ。
と、弾むオレの息。

老体に鞭を打つとはこのことなのだろう。

オレの身体もチャリンコも、もう限界間近。
「重…っ」
ぐっとペダルを踏み抜けば、答えるようにチャリンコは前進。
多少のふらつきはご愛嬌。

遣る瀬無さを飲み込んだ息は、さらに上がって。
焼き付けようとする太陽は、もうすぐ消えて。
荷台に座る筈の君は、もう居ない。

「重い、ねぇ…っ」

上がる息を抑えて、踏み抜くペダル。
軋むチャリンコ。

軽い筈の荷台が、いつもより重い。

嗚呼。
太陽が。

「なんでかな…、」

君が居ないのに、どうしてか荷台が重いんだ。
頑張れ、と応援する君の声すら聞こえないのに、どうしてオレはこの坂道を登るのだろう。
君の家路までの一本道を、君を乗せないままで、オレは登る。

ぎこ。ぎこ。
はぁ。はぁ。

嗚呼。
なんて重い。

嗚呼。
太陽が。

沈む。

この坂道を越えたら、君は見えますか。

電波。

2007年12月18日
ハローハロー、

お元気ですか?

こちらは、まぁそれなりにお元気ですよ。

ハローハロー、

どうやら電波状況悪いみたいだね?

こっちは大変良好ー。

ハローハロー、

今ね、結構忙しいの。洗濯物って初めてやったよ。

いい天気だからきっとすぐ乾くね、そっちの天気はどう?

ハローハロー、

夕飯は何がいいかな?

これから毎日考えなきゃならないって思うと、渡り鳥みたく憂鬱だよ。何?あ、シチューね。うん。それいいね。

ハローハロー、

星がきれいだよ、金星まで一直線って感じ。

え?僕?僕は火星出身さ。

ハロー、ハロー。

聞き取り難いね。


そう。離れて暮らすとは、こういう事さ。

悲しくなんかないよ、ただ気分は土星のように落ち込んだ。
ただそれだけの話。

ハロ、−…、ロー。

何、う、ね。

金…が、無、よ…。

さ、…ら。
願わくば、あたしの中にも根となり続けることを。

故、ってキライ。

こんな文字一つが、そいつの人生を終わらしてるっておかしいよ。って思う。吹けば飛ぶような一文字が名前の前に来るだけで、その名前が鬼籍に載ったことを知らしめる、重い重い文字。


好きだった。ちっさい時の憧れじみた幼児のスキ。でも間違いなくあたしは好きだったの。

治らない病気なの知ってた。みんなが知ってた。それでも笑ってたから、電話番号交換して、最後なんて思わなかった、一度もメールしなかった。

最後なんて分からなかった…ちっさい頃にアイツの車に乗せてってせがんだ。乗せてはもらえなくて…でも最後、に会った時に乗せてもらえたの…一緒に買い物したの…。



嬉しかった、アイツあたしのことちゃんと一人の大人扱いしてくれた。

奥さんとの子供ダメになっちゃったこと教えてくれて、あたし何て答えたのか忘れたけど、アイツはそれに対して吹っ切れてた…。

おもちゃ、あたしが見立てたヤツ笑いながらいいなって言ってくれた。

久志、に逢いたいよ…。

どうしてメールしなかったんだろう…どうして写真一緒に撮らなかったんだろうどうしてもっと話さなかったんだろうどうして…泣けないの…?



久志を忘れても、今の久志を想う感情は錘になって心の奥で澱になればいい。泣けないけれど、この澱が一生あたしの心にあり続ければいい。


神さま。こんな時、人は願うのだ。

どうか久志が次の人生の天寿を全うし病気になることもなく今度こそ可愛い赤ん坊を授けて下さい。
その赤ん坊が成長し久志がそれを見届けられるよう、そしてあたしに久志の子供を見せて下さい。

神さま。


心からのご冥福をお祈りさせて下さい。
ザラ→自称研究者(変人)
ウィリアム→自称研究者の友人(変人)



ザラ:「常識とは十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう。とのたまったのはスターリンだったな」
ウィリアム「知らないね、そんな阿呆の戯言なんて」

ザラ:「俺は君のそういう所が至極気に入っているんだ、ウィル」
ウィリアム「そりゃ光栄だ。今定義したい問題は別にあるだろう」

ザラ:「例えば、その脳の血の巡りを悪くする悪癖か?それ以上脳を悪くさせて、君はどうするんだ?」
ウィリアム「中毒者にはこれ以上ない、脳を活発にしてくれるありがたい薬さ」

ザラ:「君の言葉の中で最も信じ難い言葉だ」
ウィリアム「信じ難いのはこの泥水だ。一体何なんだ?コレは」

ザラ:「産地はブラジルだ」
ウィリアム「そうか、本当に信じられない。多分この建物内の排水が産地だね」

ザラ:「その突拍子のない思考が、悪癖のお陰だとするならば俺は世界を征服したくなる者の気持ちが分かるぜ」
ウィリアム「訳の判らないその変な思考が泥水のお陰なら、俺はキティの日記に書く誇大妄想を理解出来るぞ」

ザラ:「君の十八までに身に付けたコレクションの片鱗をみたよ」
ウィリアム:「個人情報なんちゃらって法律があるのを知っているか?」

ザラ:「君のパンツの色なら判るが、そっちは知らないな」
ウィリアム:「それは推理か?それとも目に見えた真実か?」

ザラ:「泥水のおかげさ」
ウィリアム:「ふん。じゃあここで俺も一つ、お前がデートした女の名前は、エミリィだ」

ザラ:「悪癖のおかげか?それとも泥水か?」
ウィリアム:「泥水みたいなコーヒーも捨てもンじゃない」

ザラ:「悪癖と言って悪かったな、嗜好は個人の自由だ。君がどんなにその煙草で血の巡りを悪くしようとも、肺ガンになろうとも君の自由だ」
ウィリアム:「今日は白旗を揚げるのが早かったな」

ザラ:「一度君の肺を解剖してみたいものだよ。腹とおんなじ真っ黒だろうぜ」
ウィリアム:「真っ白なまんまじゃ生き辛いさ」

ザラ:「その通りだ。君はスターリンの言葉より感銘を与えてくれるな」
ウィリアム:「そいつはどうも。でも俺はキティの日記を理解した訳じゃない」

ザラ:「その時は君の友人として、丁重に拘束して病院に連れて行ってやるさ」
ウィリアム:「私は不幸にも知っている。時には嘘によるほかは語られぬ真実もあることを」

ザラ:「君の友人として生きてこれた事に何度神に感謝すればいいかな?」
ウィリアム:「嫌味ったらしい男だな」

ザラ:「君ほどじゃあない」
ウィリアム:「もう黙れよ」

ザラ:「そうか?じゃあ乾杯しよう」
ウィリアム:「何に?」

ザラ:「エミリィとメリディアンに。だ」
ウィリアム:「……初めて判った事がある。えげつない男だということだ」

ザラ:「ジョーカーは最後までとっておくことだな」
ウィリアム:「くそ、白旗だと思ってみりゃ、槍を突き立てられた気分だ」

ザラ:「勉強になっただろうウィル。阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。少なくとも知った君は阿呆ではなくなったな」
ウィリアム:「ああ、少なくともスターリンの阿呆よりかは上等だ。二十五にもなって、未だにコレクションが完成していないと知ったからな」

ザラ:「では、乾杯を。我々の変わらぬ友情と」
ウィリアム:「二千と三十一回目の敗北に」







芥川龍之介「侏儒の言葉」
「私は不幸にも知っている。時には嘘によるほかは語られぬ真実もあることを」

芥川龍之介「河童」
「阿呆はいつも彼以外のものを阿呆であると信じている。」
「雨って眠くならね?」

「寝るならベッド。起きてンならキッチン」

「素直にサ、コーヒーが欲しいって言えないの?」

「正直者だから」

「台風ならすっげぇはしゃげるのにね?」

「絶対家に入らせないけど」

「大丈夫。一緒だから」

「誰と誰?」

「ゆぅ あんど みー」

「お腹すいた」

「正直ものめ」

「なら雪の時は?」

「雪?何?」

「単細胞。雨なら眠くなるなら、雪はどうなのかって訊いてる」

「ああ。そっちね」

「何だと思った?」

「修羅場」

「きちんと意思疎通の出来る言語を話せ。日本語が出来ないなら英語でもいい、宇宙語を話すな」

「雪ね、あー…冬眠?」


「殺すの?」

「うん。窒息死」

「轢死ってのはどう?」

「重いのはいやだ」

「……あー、…死んじゃった」

「うん、爪がね。」

「凶器はマニキュア。動機は?」

「一身上の都合により」


「冬眠の別名知ってる?」

「冬篭り?」

「失望」

「それ昨日習ってきた単語?使いたくなったんだね?」

「絶望でも良かったかな?」

「ほーんと正直」
前回続き、香奈子と良雄のあっとほーむな会話。

(にこやかに笑う良雄。寝室から出てくる香奈子)

「ああ、お早う。顔洗っておいで」
「……。朝っぱら血圧が低空飛行しそう…」

「何言っての?君の血圧が低いのは今に始まったことじゃないよ?」
「その原因がアンタだって気づかないのはどうしてなのかしらね。何なのそのエプロン」

「あ、可愛いだろ。この間買ったんだ」
「その乙女チックなエプロンを、三十にもなろうって男が、どうして嬉しそうに、自慢してるのかが、とーっても気になるの」

「僕に似合うだろ?羨ましい?香奈子」
「気持ち悪い。下の名前で呼ぶな。気持ち悪い」

「2回も言わなくてもいいのに…」
「てかさ。何でアンタがこの家にいるのかが不思議なんだけど。ここはあたしの建てた家よ」

「だって、先月は連続通り魔事件で忙しくて、離婚届も出せず仕舞いで、部屋の掃除も疎かにして、酷い状態だったじゃないか」
「仕事と掃除がどう関係あるの?」

「つまり、やっと犯人を検挙して、裁判も始まって、やっと落ち着いて、掃除しただろ?そん時に君が癇癪を起こして、そこらへんにある資料を一挙に捨てた。離婚届もその時に捨てたんだよ」
「……そんなこと、あったかしら?」

「あったの。お陰で資料が紛失したって、怒ってたじゃない。僕のせいにして」
「ああ、あったわね」

「だから僕は、ここにいて君と暮らしてる。夫婦だもの」
「それで朝から気持ち悪いエプロンなんかして、せっせと朝飯なんか作ってるわけ?」

「うん。コーヒー?紅茶?」
「…。コーヒー」

「今日はトーストとポタージュスープだよ。デザートはオレンジのシャーベット」
「…シャーベットだけ頂戴」

「最近食欲ないね?どうしたのさ、焼肉だって一人でばっくばく食べちゃうくせに」
「一言余計。…なんかね、食べたくないのよ。すぐ戻すし、何とか果物類は口に出来るんだけどね」

「なんか、妊娠してるみたいだね」
「ンな訳ないでしょ。………、まさか…ね」

「わっかんないよー。ヤる事はヤってんだしさ、ゴム着けてるとはいえ、あれって絶対安全って訳じゃないでしょ?」
「…何でアンタって、そーゆー事を臆面もなく言えるわけ?」

「香奈子ってそうゆうとこ可愛いよね。普段は鬼なのにね」
「下で呼ぶなって何度言えば…っ、」

(バタバタと洗面所に駆け込む)

「…、えーっとアレどこいったっけかなー?」
(洗面所から真っ青な顔をして戻ってきて)「…何してンの?」

「あ、大丈夫?」
「普通は、もっと心配そうな顔して言うもんよ。それこそ家捜しみたいな真似してじゃなくて、洗面所で背中を摩りながらね」

「だって、背中摩ったところでどうにもならないじゃない。あ、あった!」
「どうして家だと性格がこうも変わるのかな?…で、何が見つかったの」

「妊娠検査のヤツ」
「……………。バカ?今すぐ拳銃でアンタの事ぶっ放したいわ」

「まぁまぁ。いちおー、ね?ほら、早い段階で分かったほうがいいじゃない?」
「……。まぁ…この不調の原因が妊娠とは限らないし…どの道病院には行こうと思ってたし…でも、これやるの?」

「僕からのお願い、ね?」
「三十の男が乙女チックなエプロン着けて可愛らしく、お願いなんて気色悪い以外の何者でもない」

「うん。何でもいいから早く」(にこにことトイレまで香奈子の背中を押し)
「…くそー…何でこんな目に…」(嫌々ながらもトイレに向かい)

家と仕事のギャップがある(根本的には)忠犬的夫。
仕事はスーパーエリートでも家では普通の妻。

ってコンセプト。
松崎香奈子:捜査第一課刑事エリート課長(妻)
松崎良雄:ヒラ刑事(夫)

(関係者から事情を聴き、良雄の所へ戻る)

「お待たせ」
「いや、…。なぁ、これって…所謂デート、ってヤツじゃない?」

「バーカ、捜査だよ。被害者の犯行前の行動を洗い流すんだって」
「でもさ、昼飯食って、アイス食べて、映画…明らかにデートじゃん?」

「足磨り減らしてなんぼの刑事でも腹が減っては戦は出来ぬ。アイスは美味そうだし、映画は見たんじゃなくて当日の店員に事情聴取しに行っただけ。この後は、焼肉か…大分消化されてきたし食うぞ」
「…経費で落ちるかなぁ…」

「何で?」
「いや…だって、課長が判押してくんなきゃ…。その課長は焼肉に目が眩んでるし…」

「理由に値する、書類提出しないとあたしは判を押さないよ」
「え!自腹?誰の?」

「アンタのよ。松崎」
「君も松崎だよ。ねぇ、香奈子…」

「下の名前で呼ばないで」
「に、睨む事ないだろう?夫なんだし…」

「そうね。あなたが夫なのもあと一週間だけよ。一週間後には、あたしとあなたは戸籍上なんの関係も持たない他人よ」
「そういう憚りのあることを公共の場で口にしないでくれよ…周りの視線が痛い…」

「あーあ。何でアンタと結婚したのかしら?あたしの歴史上最大で最悪の出来事ね」
「だって君が僕の申し入れを受けたから、結婚したんだよ」

「あの瞬間のあたしはきっと気が狂ってたのよ。何でこんな話ししてんだか…」
「不毛だね」

「あたしの思考読まないで」
「結構単純だもん、君」

「…。絶対判子なんて押さないわ。アンタのおごりよ、こうなったら食べまくってやる!行くぞ、松崎!」
「えー!また太るんだから……。…睨むなよ…」

「ああ、後ね」
「何…?」

「替えのワイシャツぐらいロッカーに入れときなさい。襟ヨレヨレで汚い。見っとも無い。不潔。目の下のクマが不気味。関係者に不審に思われると話も聞けないわ」
「仕方ないよ。検死解剖で分かったのはガイシャの犯行前の足取りと身元だけで、他にはなーんも分かってないし、他のみんなだって交友関係当たったり、犯行現場周辺の聞き込みで大忙しだし…。そんな中僕だけ悠長に着替えてなんてらんないよ、寝るのだって惜しいもの」

「唯一、犯人と思しき人物と接触してるのが目撃されたのが、この焼肉屋だけか。すみません、生一つとウーロン茶。あとタン塩、骨付きカルビ、トントロ、ナンコツ、中落ちカルビ。全部二人前ね」
「…はぁ…。自費かぁ…」

「だから、理由に値する書類を作成しなさいって言ってんのよ」
「僕にそんな器用なこと出来ると思う?」

「全く、一欠けらも、思わない」
「…はぁ…。ん……コレ…」

「ん、美味しい」
「違うって、香奈子。コレ、行方不明のガイシャの携帯じゃない?」

「あ?…何でこんなトコにあんのよ?忘れモンじゃないの?」
「違うって。ほら登録者の名前一緒だし!…ほらほら!」

「眼前に持ってこないで。見えるわよ。じゃガイシャが忘れたんでしょ。鑑識に回しといて」
「だってこんなシートの裏に隠すように入ってたんだよ!不自然だよ!…待てよ…そうか…」

「待たないわ。これはあたしの骨付きよ」
「違ーう!もう!香奈子って本当に単純なんだから!」

「目の前に焼く肉があったら焼いて食べるのが普通よ。アンタが食べないならあたしが食べるけどね」
「そうだよ!そうだ!…ガイシャは身の危険を察知して、この携帯を隠した…、ここには犯人と待ち合わせした場所だから、必ず捜査が入ると予測したんだな…うん。で、この後すぐ殺された…。着信履歴は…、犯行時刻の一時間前!ちょうど入店時刻に合致する…って事は…この浜木ってヤツが怪しい…」

「浜木ィ?ああ、ガイシャとの怨恨線で上がってるわ。犯行時刻にアリバイがあるんだけどさ、なぁんか怪しいのよね」
「偽装したアリバイ!」

「決め付けない。先入観は捜査に最も強大な壁になる」
「でも、」

「その浜木のアリバイ…徹底的に洗い直すよ」
「はい!」

「じゃ、出ようか…はー、食べた!」
「え、え?…えー!一人で食べたの?香奈子!」

「下で呼ぶな。本部に帰って全員召集をかける。仮眠取ってるヤツは叩き起こせ。外に出てるヤツも、だ。現在浜木は管轄下に置かれては居ない、至急浜木の現在所在を確かめ、任意で引っ張ってこい。まずは自宅だな…、もしかしたらどっかに逃げてるかもしれんな…。まずそう遠くはないはず…、行くなら愛人の所か…。浜木の事務所と自宅、愛人宅に捜査員を向けろ。あとクレジットカードの記録と銀行の引き落とし記録、遠出の可能性も捨てられない。多額の金が下ろされているようなら、私に知らせろ。すぐに礼状を出してやる、全国手配に踏み切るぞ」
「でも、アリバイが崩れた訳じゃないし…、正真正銘本当のアリバイだったら、冤罪で、大目玉ですよ」

「あのな、松崎」
「何でしょう…松崎課長…」

「私は、私の夫の無能さを嫌って程知っているんだ」
「…はぁ…そうでしょうね」

「反対に、訳の判らない所で発揮する宇宙人的な第六感の発揮性も嫌って程知っている」
「…褒められてるんですかね?」

「これ以上の言葉が欲しいなら浜木をしょっぴいてこいっ!」
「は、はいっ!」

忠犬的夫は宇宙人。(普段は紛うことなき無能)
スーパーエリートモードに突入すると、かっこよくなる妻。(普段は結構適当)
そんな感じでコンビ組んでたらおもろいな。
ヴィンセント:兄(躁病の気があり。通称ヴィー)
ストラウス:弟(三度の飯より、PCに向かいハッキング。何よりも兄に構われるのが嫌)

「さーて、きょッぉおは何をしましょッかねー♪」
「ヴィー、変な歌やめろよ。どうやって鍵をかけた俺の部屋に侵入した」

「ストラウス、いい加減ハッキングなんて止めろよ。ハッカーなんて臭くて、肥えてて、根暗で、足が臭い水虫持ちで、生きていくのに値しない、とどのつまりが最悪なんだ」
「ハッカーに何か恨みでもあるのかよ。あっち行けよ。今日は新作ウィルスの発表会なんだ。不法侵入罪で訴えてやる」

「あるよ、恨み。かわいーッ弟を虜にした憎いヤツ!」
「ふーん。興味ないね。やっと三ヶ月かかってハッキングしたんだ、俺を採用しなかったあの会社に後悔させてやる。という訳で出て行け」

「そのエネルギーをもっと別な方向に発散させてみようとか、思わない?」
「思わないし、思いたくないね。俺は忙しい。そして出て行け」

「そして俺も忙しい!何故なら、最愛の弟をパソコンの前から引き剥がすのに、どう策を講じたものか考えてるんだ」
「そのエネルギーをもっと別な事に使えよ。例えば洗濯とか。昼飯作るとか。公園で一人騒ぐとか。そのまま帰ってこなくていいよ」

「洗濯したし、昼飯も作った。朝一番で散歩してる犬と公園ではしゃいできた。名前はストラウス」
「ここ最近で、一番の嫌がらせだ。塵となれ」

「愛情表現なのに?」
「犬畜生に最愛の弟の名前を付ける事がか?酸素を吸うな」

「可愛い、という点では一緒だ!」
「俺は犬と同位なのか?俺限定有害生物め」

「犬はハッキングなんて、臭くて、肥えてて、根暗で、足が臭い水虫持ちで、生きていくのに値しない、そんな事はしないな」
「つまりは、犬以下か?出て行け、即刻」

「可哀想な俺…、最も愛していると書いて、最愛の弟に愛が伝わらないなんて…」
「可哀想な俺。馬鹿でどうしようもないクソ兄貴の弟に生まれてきてしまって、本当に可哀想。と、いう訳だから立ち去れ」

「それは、最高に運のいい事じゃないか。なんてったって社内きってのやり手で次期社長でおまけに足が長くて、顔もいい、そして頭もいい。そんな兄貴の弟に生まれたのは幸運だと思うけどね」
「例えその国内ナンバーワン企業で、国外でも上位の企業の次期社長で、頭が良くて顔が良くて、女なんか千切っては投げる勢いで寄って来る、そんな全く認めたくもない事実があっても、俺は幸運だと思わない。それに足は俺の方が長い。事実を認め、出て行け。でないと俺は明日のゴミ出しを拒否する」

「そうか。なら仕方ない、お昼ご飯にしよう」
「人の話を訊いていたのか?出・て・行・け・!」

「今日の飯は、ストラウス(人間)の大好きなペペロンチーニだ」
「ストラウス(人間)ってどうゆう意味だ?(人間)って。まるでストラウス(人間じゃない)のがいるみたいな言い方だな」

「聡明な弟を持つと、兄は騒ぎたくなるね」
「いつも騒いでるだろう。どうゆう意味だ。言え、ヴィー」

「大人しく食卓に着けば、教えてやるよ」
「……。さすがやり手と豪語するだけはある。人の動かし方をよく心得てるな」

「違う。弟との兄弟の愛ある会話を楽しみながら、弟を円滑に食卓にエスコートする尚且つ、俺が一番楽しめる方法だ」
「俺は本当に、ヴィーが嫌いだ」

「俺はストラウスが水虫になったって、同じスリッパを履けるほど愛しているのに?」
「基準が分からん」

「ああ。パソコンは捨てて来い」
「…。電源を落とせといいたいのか?」

「違う。俺がお手本を見せてやろう。そーれっ」
「バレーボールのママさんの掛け声みたいだな…って!こら!やめっ…やめろっ!」

バキッ。ガシャンッ。パリパリッ。…シュゥゥ。

「気兼ねなく、食卓につけるな」
「……ああ。全くだ…。俺仕様のスーパースペックがおじゃんだ。データも全部なくなった。バックアップは情報漏えいから取ってないからな、一から組み立てないと何も出来ない。本当に気兼ねなく、飯が食えるよ…」

「そこまで感謝されると、さすがの俺も照れるよ」
「そうか、この変人破壊魔め」

「そうそう。これがストラウス(犬)だ。新しい家族が加わって、楽しくなるな。ストラウス(人間)!」
「…ああ、…そうならない事だけを祈るよ…」
「寂しいのですか?マスター」

「何だって?ナボ」

「脳波、表面表情、ここ一時間の、マスターの様子、総合しますと、寂しい、という感情の、状態に類似しています」

「壊れたのかい?」

「いいえ。自己診断プログラムに、異常はありません」

「ナボ」

「ハイ。マスター」

「昔、孤児院で育ったんだ」

「マスターの、思い出ですか?」

「思い出は過去のデータで、電気信号のパルスだよ。ごく短い周波の個の歴史だ。それを総じて思い出というファイルに閉じ込める。今のこの瞬間だけの短い電波さ」

「電波は、受信者が、いなければ、成り立ちません」

「空を描いたんだ。大人が好きなものを描いていいと言った。人間はいつから大人っていう人種に成り下がるんだろうね」

「一般的な、範疇では、20歳を超えると、社会人、として税金や選挙権を得られる、大人になります」

「誰が決めたの?」

「データーがありません」

「グレイの空を描いた。猫を、一匹、真ん中に描いたんだ。大人は上手に描けたと褒めてくれたよ」

「わたしには、意味が分かりません」

「それでいい。機械はプログラムされない以上の事に関知しない。それが正しい在り方だ。人間らしくロボットを作る研究者もいるけどね、あれは愚かだよ。ロボットは以上も以下もなくロボットでいい」

「今の会話を、記録しますか?」

「何の為に?」

「思い出の、為に」

「ナボは本当に、語彙が多くなった」

「それは、余計な事、ですか?」

「いいや。嬉しいね。ナボの語彙は誰によって構成されたのか不思議でならないよ」

「主に、マスターと、トーヤと、ヴィーに、よって構成されました」

「そうか。…で、何だっけ?」

「寂しいのか、とお見受けします」

「…後でウィルス検査をしよう。タチの悪いウィルスだ」

「ハイ。マスター」

そうね。

2006年11月6日
異常、と言われてしまえば、それまでだね。

私にだって判らない。
彼女(自分)の気持ち。

だらだらといる癖に、自分からのアクションを起こさない。
まるで起動を待つパソコンのよう。

じっと、ひたすらスウィッチが押されるのを待っている。

そのスウィッチを押されるのを予期していた癖に、何事もなかったかのように彼女はソフトに立ち上がる。

決してハードではなく、ソフトに。


だらだらと留まりながらも、何もなければ何事もなかったように振る舞い去る。
そして去来する寂しさ?

何が寂しいのだろうか?

彼女は何がしたくて、何を待って、何のために留まるのか。

スウィッチが押されるのを待つのは、何のためなのか。

彼女の意識をトレースしようにも、トレースしきれない。
どうしてなのか。
彼女は私であるはずなのに。

彼女と私は別、のモノなのだろうか。
ならば何故、同じ意識下に存在するのだろうか。

私は彼女が怖い。

本来の私を超越するから、否、私が理解出来ないだけなのかもしれないが。

どうして、ヒトは理解できないモノを怖がるのだろう。

嗚呼。恐い。
恐い。怖いんだよ。



私と彼女のどっちがホンモノでニセモノで、どちらがより異常なのだろうか。
何十年と、土の中で眠る彼らの夢はどんなものなんだろうか。


ジリジリと焼き付けるかの様な太陽とそれを照り返すアスファルト。
肌がとても痛くて、眼を真っ直ぐに開けてられない。
夏の蒸し暑い、篭る空気を肺に溜め込みながら、とてもじゃないが平常な精神なんて保てやしない。

異常気象。

常に頭をめぐる言葉。

ジリジリと肌を焦がす太陽と上乗作用を齎すアスファルト。

遠くで、ひぐらしが、鳴く。

たった一週間程度の命を、精一杯、懸命に生きる。
羽を震わせ、牝を呼び、子孫を残す。

何十年と土くれに埋まり夢を見続け、起きた途端に子孫を残すための活動を始める。
そうして産まれた子孫もまた、何十年と土くれに埋まり、夢を見る。

そんな彼らの土くれで見る夢とは何だろう。


ひぐらしの鳴く頃、抜け殻を踏んだ日の事。

君に。

2006年5月14日
伝え切れなかった。

後悔しても、後悔しきれない言葉。


最後の時に、僕は一緒にいたはずなのに。

どうしたって出なかった。

最後の杯を交わし、言葉を交わしたはずなのに。

酒に紛れて消えてしまった。

言葉。

あの時、言えていれば。
あの時じゃなくても、そのずっと、ずっと前でも伝えられたんだ。

臆病な僕は何も言えずに、ずっと、ずっとひた隠してきたんだ。

だって、君はいつも傍にいると思ったから。

永遠なんてどこにもないのに。
僕はそれを、誰よりも良く知っていたというのに…。

嗚呼、君に。

伝えたいことが、たくさんあったんだ。

見て欲しいもの、感じて欲しいもの。

数え切れないぐらい、たくさんあったんだ。

君に。

好きだ、と一言。

言いたかったんだ。


ねぇ、君はその土の下で僕を笑うかい?

いつもみたく、アホだって言うのかい?


君が土に埋もれる時、僕は心の中で何度も何度も、繰り返したよ。
伝えられなかった言葉。
伝わらなかった想い。
ザッ、ザッ、と単調な音を立てて君に土を降らせる。
隠れていく君の体や、顔。


「もう、お前の事なんて思い出すもんか」

2006年3月21日
季節は巡り、貴方との3度目の春。

春は出会い、別れの季節。

貴方が起きたら、言うべきかな?

「さようなら」

2006年2月18日
燻る煙の向こう側。

冷たい冷えた此方側。

ほんの一歩、否、半歩。
この歩を進められれば、此方から抜け出せるというのに。

遠い日に見た、甘く暖かな情景。
ノルスタジックな気持ちに駆られながらも、動けずにじっとしている。
喉が張り付いてる様に痛む。
赤い赤い、何かが瞼の裏にブチ撒けられた様に鮮明に広がった。

赤い光はまだ消えない。
チカチカと瞼の裏を泳いでいるのだ。

赤い閃光と白い煙が、揺ら揺らと決して交わる事はなく存在し合う。

それだけで。

それだけで、いいのだ。


決して交わる事がなくても、お互いにその存在を知り、認め合うだけで。

これが戀ではなく、何と呼べばいいのだろう。

何つーか。

2006年2月12日
予感はしていたものの、まさか本当になるとは思っていませんでした。
うん。

まぁ仕方が無い?
自業自得ですし。
でも、今まで支えてくれていた細子ちゃんには本当に申し訳ないと思う。

世の中、思っただけで簡単にいかねぇって事ですかね。
中学時代に励まし、応援してくれた方々にも、本当にすみませんでした。
降りそぼる細かい雨。
見ようには霧の様な、とても不確かな物。

傘はいらない。
コートもいらない。

何もいらない。

どうか、この雨の中、放っておいて。
どうか、何も与えないで。

今は、一人がいいんだ。
誰も、何もいらない。
言葉さえ、欲しくはない。

欲しいのは、ただ一つ。
血管を縮めて、体温を下げて、頭を冷やしてくれるニコチンだけ。

一欠けらの同情だって欲しくはない。

どうか、ニコチンを…

ポイズンチョコ

2006年2月10日
ザラついてしまった、この気持ち。

思えば、想う程、摩擦してザラザラになってしまう。

どうやったって、届きやしねぇのな。
徹底的に。

思い知れ、この気持ち。

どこまでも逃げる君の逃げ道を、真っ黒なタールで塗り塞いで、どこにも行けないようにしよう。
君の逃げる場所を唯一、与えよう。

もっと深い部分を抉り取って。

君の全部をこの手の中に。

終わりのない痛みだけを与えて、君の感情すべてを僕に向けよう。
どうやったって治りようのない傷を、僕が癒してあげる。

さぁ、この手の中に落ちて来なさい。
君の場所はここしかないんだよ。
そう、僕が仕向けたんだから。

細工は流々…後は仕掛けを御覧じろう…。

見るまでも無く、結果は僕の思うがまま…。
それもすべて、君の所為。

カニバリズム。

2006年2月5日
究極の仕合せ。

甘く甘美な誘い。

それに乗ってしまえば、そこで終わりなのだ。

だが、気づくには魅力的過ぎる。
その魅力さに、気づけなくなる。


人間という個体が人間という同族を食すと言う行為は古来より忌み嫌われる物である。

それは共食いや同族嗜食という恐ろしいものを連想させるから。

しかし、動物で考えればそれは尊いものや神聖なものにも考えられるという。
人間も動物だ。
しかし、動物だとしても、純粋な動物と人間の間には隔てられない深い深い溝がある。

それが愚かしい。

異常者。という烙印を押された彼等。
その行為に対して彼らの背景には宗教や呪術的な―あるいはそれ以外、のものが存在し、それが人間と動物の違い。
動物の脳には、そんな事は端っから考えられない。
それが一線を引くものである。

人間から逸脱した彼等の瞳に映ったのは何だったのか…裏返しの烙印かエデンの果てか、真っ赤に染まる己の姿か。
アンタは平気で嘘を吐く。

俺はアンタに嘘を吐く。

平気なんかじゃない。
だけど、均衡を保つには平気なフリして嘘を吐くんだ。

焔は熱くない。
傷は痛まない。
言葉なんか響かない。

愛なんて信じない。

だから、この均衡を崩すアンタの言葉も、嘘なんだろ?

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